「新しいことにチャレンジしたい」「生き方を変えたい」なんて日頃からぼんやり考えてはいても、なかなか新たな一歩を踏み出せないものですね。「自信がない」「失敗したらどうしよう」「家族の理解が……」などと言い訳をしながら尻込みしてしまいます。
けれども、思いがけないターニングポイントを経て、人生は大きく変わっていくかもしれません。今回は映画ライターの中島もえが、「転機を迎えたときに背中を押してもらえる」おすすめの映画を3本ご紹介します。新しい世界に一歩踏み出して人生を変えた主人公たちから、勇気をもらえますよ!
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[Before]
この映画の主人公、42歳のウォルター・ミティー(ベン・スティラー)は雑誌『Life』の写真管理部で働いている。仕事熱心で真面目な性格だが、空想癖があり、地味な仕事をしながら平凡な日常を送っていて、冒険の旅に憧れながらも実行することはない。引っ込み思案で積極的に他人と関わったり外に出て行こうとしたりしないタイプの彼は、好きな女性に声を掛ける勇気もなく、長年仕事のパートナーとして付き合ってきた写真家のショーン・オコンネル(ショーン・ペン)とも、実は直接会ったことも声を聞いたこともなかった。
[それが人生の目的だから――雑誌のスローガンが背中を押す]
ニューヨークからはるか遠くのグリーンランドにいるショーンに会いに行くことに尻込みするウォルターは、「……それが人生の目的だから」という『Life』誌のスローガンと、ネガフィルムと一緒にショーンから贈られたメッセージに背中を押され、会社を飛び出していく(このシーンはとても感動的なので、詳しくは説明しません。ぜひ映画の中でご確認ください!)。
[After]
グリーンランド、アイスランド、ヒマラヤを巡る大冒険での奇想天外な体験や人との出会いを通して、現実の世界は空想の世界よりもドラマチックだと知り、たくましく変わっていくウォルター(彼の姿から、私たちも未知の世界へ踏み出す勇気をもらえます)。そして、捜し求めていたネガフィルムに映っていたものが判明する(予想外のラストも見どころです!)。
[Before]
高級レストランの総料理長を務めるカール・キャスパー(ジョン・ファヴロー)は地元で1、2を争う人気シェフ。だが、独創性のある彼の創作料理を認めず、長年の定番メニューに固執するオーナー(ダスティン・ホフマン)に少々うんざりしており、料理への情熱も冷めかけている。自分を正しく評価してくれないオーナーに不満を持ち、「自由に自分の好きな料理を作りたい」と思いながらも、一流レストランのシェフであるということへのプライドとこだわりを捨て切れず、苦悩するカール。
[おいしいサンドイッチとの出会いが背中を押す]
すべてを失ったカールは、気晴らしに元妻のイネズ(ソフィア・ベルガラ)と息子(エムジェイ・アンソニー)と一緒にマイアミに行く。そこで「キューバサンドイッチ」に出会い、そのおいしさに感動する。そして、イネズがかねてからすすめていた「フードトラック(移動屋台)」でサンドイッチや素朴な家庭料理を販売するビジネスにチャレンジしようと決心をする。
[After]
カールはキューバサンドイッチの販売を始めて、「自分が本当にやりたいことは一流レストランじゃなく、フードトラックにあったんだ!」と気づく。どん底の状況なのに、レストランの厨房にいたときよりも楽しげに料理を作るカールは、失いかけた仕事への情熱と家族の絆を再生させていく。(映画本編には、彼が手がけるおいしそうな料理の数々が、陽気なラテンのリズムとともに描かれていて、観ているうちに食欲と元気が湧いてきます!)
[関連情報]
キューバサンドイッチを食べたら新しいことに挑戦したくなるかもしれませんよ! 作り方は映画の公式HP(http://chef-movie.jp/tagged/レシピ)をご覧ください。
[Before]
子持ちでバツイチ、42歳の大黒シズオ(堤真一)は、ある日「本当の自分を探す」と何も考えずにいきなり会社を辞めてしまう(この映画の主人公シズオは、先ほどの2作品の主人公とはちょっとタイプが違います。新しい世界に踏み出すことに何のためらいもなく、はじめから会社員であることに執着がありません)。無職になったシズオはほぼ1日中家でダラダラ過ごし、挙げ句の果てには娘に借金までする始末(あまりにリアルなだらけっぷりで「私も気を抜いたらこうなるかも」と不安になるほどです)。
[腐らずに漫画を書き続けるシズオの姿勢が背中を押す]
しかし、シズオは出版社に漫画の原稿を持ち込むもののまったく採用されない。生計を立てるためにファストフード店でアルバイトを始めるが、ミスを繰り返し、バイト仲間から「店長」というあだ名を付けられて、ばかにされる。そんなシズオに父親の志郎(石橋蓮司)は漫画家になる夢は諦めて会社員に戻るように諭す一方で、シズオの娘の鈴子(橋本愛)は自由奔放に生きる父親を静かに見守る。シズオのどこまでも自由な生きざまは、彼に関わった人たちをジワジワと変えていく。周りから何を言われても「俺は漫画家としてデビューする!」という揺らがない自信があり、何度不採用になっても腐らずに漫画を描き続けるシズオであった(彼の姿勢にだんだんと引き付けられ、最後には私自身のことと重なって「頑張れシズオ!」と応援したくなるのです)。
[After]
親や友人から「もう漫画なんかやめろ!」と言われても、ニヤニヤしながら「俺はまだ本気出してないだけだから」と言って夢を捨てず、心の強さを見せるシズオは、果たして漫画家デビューすることができるのか……(ぜひ映画を見てください!)。新しい世界に一歩踏み出すためには、周りの人の目は気にせず、自分の心に正直に向き合うことが大切なのだということを教えてくれる作品である。
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