「英語なんて話せない!」「学生時代に英語を勉強したきりだから、すっかり忘れてしまった」などと、英語に対して苦手意識を感じている方。「英語が話せない」と考えてしまうのは、決して「英語の勉強が足りないから」ではありません。
この連載では、英語の苦手意識を払拭し、「話せる!」まで到達する実践的な手法を紹介します。
「すべてが伝わっているわけではない」という前提に立つ
「日本語」モードから「英語」モードへ、カチッとスイッチを入れかえるだけで、グローバルコミュニケーションがうまくいくわけではありません。
私たちにとっての英語とは「非母国語」です。
当然、母国語より不便なわけですから、母国語を話すときより「わかりやすい」ことを意識したほうが戦略的ですよね。そういったことを特に気にしないまま話をして、「あれ、ちゃんと伝わってる?」「あぁ、やっぱり英語では伝わらない」と、半ばあきらめに近い境地に達しているかもしれません。
非母国語として英語を使うときのコツは、「常に相手に100%理解されているわけでははい」という前提に立っておく、ということです。
ところどころ発音が悪かったり、間違った語法を用いていたりと、一部情報が欠落した状態で相手に届いているかもしれません。ちょうど、虫に食われた本のページのようなものです。
ただ、一部虫に食われて、文字情報が欠落した本でも、運がよければなんとか意味くらいは把握できるかもしれません。前後の情報や文脈から欠損している部分を想像して、なんとか意味を補完できる場合もあるということです。
英会話も同じです。万が一、あなたが英語で伝える情報の一部が欠落していても、相手がそれを補って理解してくれる。それで意味が通じる、という形でも構わない。むしろ、その相互依存の形を想定して会話を進めるほうが、効果的で実用的なのです。
あれこれ説明するより、まずは結論から
では、英会話において「情報が一部欠落している状態でも会話を進める」ためにすべきことはどんなことでしょうか。
それは、いくつか欠けている情報があったとしても、相手が意味を補完しやすいように話をするということです。
具体的に言うと、「文章の構造に気をつける」ということです。
たとえば、すぐにできるのは「結論から話すこと」です。
日本人の話し方は「結論を最後に話す」パターンが多いのです。
「起承転結」という言葉もあるように、導入から入り、それを説明し、ちょっとハラハラさせるような意外な展開を話してから、最後に「ということで、私は○○さんの意見に賛成です」とやりがちです。
物語的ですし、浪花節的で味もあって、僕も個人的には好きなのですが、第10話でもお話しした通り、ローコンテクストな会話においては、結論にたどり着く前に話の方向性を見失ってしまう人が多いのも確かです。
バシッと結論を先に話す。そしてその理由を並べる。
これがグローバルでの伝わりやすい話し方です。
ローコンテクストな状況において有用な「直接的な表現」とも合致します。
「エレベーターピッチ」を想定して端的かつ論理的に述べる
もうひとつ、役立つ方法としてお伝えしたいのは「エレベーターピッチ」です。
「エレベーターピッチ」とは、アメリカのビジネス界でよく使われる言葉ですが、「超短時間でのスピーチ」のことを言います。エレベーターで要人にたまたま出くわしたとき、一緒に乗っている非常に短い時間の中で、大切なことを簡潔に伝える、といったことから来ています。
では、たまたま大物投資家とエレベーターで一緒になったと想像してみましょう。「私の事業に投資してください」と短時間で訴える。時間は30秒から1分程度で、自分の言いたいことを相手に伝えなければなりません。そのためには、日ごろから端的に要点を捉え、伝えるべきことを整理しておく必要があるのです。
エレベーターピッチを想定して会話の訓練をすると、要点を整理し、論理的に話すクセがつくため、相手にはグンと伝わりやすくなります。
ポイントは「会話をピラミッド構造にすること」です。
たとえば「リンゴは好きですか?」という問いには、
「好きです。理由は3つあります。1つ目は甘いからです。2つ目はジューシーだから。そして3つ目は健康にいいからですね」といったように答えます。
この文章を分解してみると、理由1~3のうえに結論が成り立つ「ピラミッド構造」が成り立っていて、結論から先に述べているということになります。
大切なのは、はじめから文の構造を表明していることです。
つまり「自分の意見はこれで、ここから理由を羅列していきますよ」と、話の構造を最初に明示するのです。 そして「three(3つ)」のところはもちろんボディーランゲージを活用しましょう。 そう、指を3本突き出すのです。
「First,(最初は)」と指を1本、 「Second,(2つ目は)」で指を2本、 「Third, (3つ目は)」のところで指を3本突き出します。ボディーランゲージを活用することで視覚的効果も高まり、相手はあなたがいま何を話しているのかがわかり、少々聞き取れないところがあっても、十分に意味を推測してくれるでしょう。
この話し方をするだけで、たとえこちらからの英語の情報が多少欠落していても、相手に断然伝わりやすくなるはずです。そうすれば英語のことがちょっと好きになるかもしれませんよ!
エレベーターピッチについては、こちらの動画も参考にしてみてください。

ハーバード大学にてMBA取得。日本の総合商社にて様々なグローバルビジネスに従事。その後イングリッシュブートキャンプを立ち上げる。また企業研修の講師としても活躍中。総合商社やメーカー等の大手企業や、成長企業向けにグローバル/リーダーシップ/交渉術等の研修を開発、自身も講師として登壇している。
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