//「空気を読む」 は海外では通じない!ー英会話の苦手意識が消えない本当の理由【10】

「空気を読む」 は海外では通じない!ー英会話の苦手意識が消えない本当の理由【10】

「英語なんて話せない!」「学生時代に英語を勉強したきりだから、すっかり忘れてしまった」などと、英語に対して苦手意識を感じている方。「英語が話せない」と考えてしまうのは、決して「英語の勉強が足りないから」ではありません。

この連載では、英語の苦手意識を払拭し、「話せる!」まで到達する実践的な手法を紹介します。

暗黙の了解が通用する日本は「ハイコンテクスト文化」

まず理解しておきたいことは、グローバルコミュニケーションは「ローコンテクスト」ということです。

アメリカの文化人類学者エドワード・ホール氏が提唱している「コンテクスト(文脈)」とは、大雑把に言えば、コミュニケーションにおいて共有されている前提のようなものです。つまり、多かれ少なかれどの文化にもコンテクスト(=言葉に出さなくても共有されていること)があって、実際に言葉としてやり取りされているものだけでなく、コンテクストによってそれ以上の意思疎通を行なっているのです。言い換えれば、 「言葉には出さない合意」 がコンテクストというものなのです。それぞれの国には固有のコンテクストがあるからこそ、文字情報以上のものが伝わるのです。
さらに、ホール氏はコンテクストの強弱は文化圏ごとに異なると指摘し、「コンテクストが高い文化(ハイコンテクスト文化)」として日本を紹介しています。

日本には、「空気を読む」 という言葉がありますが、「口には出さないけど、それくらいわかるでしょ」 といった合意がたくさんあります。その 「暗黙の了解」 の中でコミュニケーションをとっているのが私たち日本人と言えるようです。

たとえば、日本人同士の会話ではよく「今週末は、ちょっと……」 という言い方をします。ちょっとの先が何なのかをいちいち言わなくても、「都合が悪い」ということを表すことができるのです。私たちは「他の用事があります」と直接的に断るのは、相手にとって失礼にあたるという思いから言葉を濁します。誘っているほうも相手が直接的に断りにくいことを十分に知っているので「ちょっと……」と聞いただけで、ダメなんだなと敏感に察し、「あ、ごめん、気にしないで」と早々に誘いを引き上げます。

これは「誘いは断りにくいもの」「直接断ると角が立つ」といった文化的背景を理解した「日本語のプロ」同士の非常に高度なレベルでのやり取りです。「ちょっと」という明示された言語情報以外のものを、すでにお互いに共有しているため、「ちょっと」だけで「難しい」と理解することができる。「ちょっと」という言語情報以外に自然と受け取っているものが、コンテクストなのです。

もしこのとき、アメリカ人に「Oh, this weekend is a little….(今週末はちょっと…)」と言っても、「A little what?(少し…何?)」「Difficult? (難しいの?)」と直接的なやり取りに持ち込まれる場合が多いでしょう。

日本人のコミュニケーションの特色については動画でもご紹介しています。
「英語を通じにくくする日本人のコミュニケーションのクセを知ろう」

「笑顔を絶やさない」のは最大の防御

海外の人と会話するとき、私たち日本人が強く意識したいのは、「異文化との対話」とは、「日本の空気感やコンテクスト」を共有していない人との対話だということです。

小さい頃から慣れ親しみ、当たり前のものとみなしてきた「空気感」を共有していないのですから、想像を絶するくらい大変な世界です。かすかな表現や曖昧な態度でも、日本人なら敏感にそれを察知し、理解してくれたかもしれませんが、異文化の中で生まれ育った人と話すうえでは通用しません。 ハイコンテクストで生きてきた私たち日本人にとって、ローコンテクスト文化が前提となるグローバル環境で気をつけたいことがいくつかあります。

  • 1. 笑顔を絶やさない
  • 2. 直接的な表現を心がける
  • 3. 寡黙では伝わらない
  • 4. 論理の飛躍をさせない
  • 5. 質疑応答を活用する

この中でもっともカンタンで大切なのは、1. の「笑顔を絶やさない」ことです。

なぜ笑顔を絶やしてはいけないのか。
それは、単純に言えば、笑顔が「事故を未然に防ぐから」です。
お互い違うコンテクストを持ったもの同士で会話するとき、こちらが発信したことが意図せず相手を傷つけたり、不快にさせたりするかもしれません。
ローコンテクストの状況下では、相手に誤解を招くような発言も出てしまうかもしれないのです。
しかし、常に満面の笑みで楽しげに会話を続ける限り、「他意はない」ことを相手に示すことができます。ローコンテクストに慣れていない私たちにとって、最大の防御になるのが「笑顔」なのです。

人間は太古の昔から、異文化が交わる場所では、出会い頭から渾身の笑顔を相手に振りまき「私は害のない存在です」「安心してください。私はむしろあなたに好意を抱いています」と見た目から表現することで、互いの緊張状態を瞬時に解き、友好関係を築いてきたのではないでしょうか。
「柔和で控えめな笑顔」程度では足りません。あけっぴろげな、「ニコッ」と形容できるくらいの満面の笑み。口角をこれでもか、とグイーンと上げる最高の笑みが有効です。自分が楽しそうに笑っていると、その笑顔は相手にも伝染します。そうやって相手も笑顔になれば最高です。

出会い頭だけではなく、会話の最中から、お別れのときまでずっと大きな笑顔でいられたらバッチリです。笑顔に自信のない方は、鏡の前で「笑顔の千本ノック」トレーニングをしてでも、自然に笑顔ができるようになりましょう!

ハーバード大学にてMBA取得。日本の総合商社にて様々なグローバルビジネスに従事。その後イングリッシュブートキャンプを立ち上げる。また企業研修の講師としても活躍中。総合商社やメーカー等の大手企業や、成長企業向けにグローバル/リーダーシップ/交渉術等の研修を開発、自身も講師として登壇している。

By |2018-10-10T21:00:45+00:00October 10th, 2018|Categories: generalEBC|0 Comments

Leave A Comment

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.