//多文化世界〜違いを学び未来への道を探る〜 お互いの違いを認め合うきっかけとなる書籍

多文化世界〜違いを学び未来への道を探る〜 お互いの違いを認め合うきっかけとなる書籍

日本政府観光局(JNTO)の統計によると、2018年1月から9月までの訪日外客数は累計約2347万人で、前年同月時点の約2119万人を既に超えており、日本への外国人観光客は年々増え続けています。

日本とは違った文化、言語で暮らしてきた人々とふれあう機会も一層増えてくることでしょう。本書では、50カ国以上の国々から採取したデータを使用し、文化による価値観の違いを調査。考え方、感じ方、行動の理由の違いを分析し、異文化についてさまざまな角度からの相互理解を進めようという目的で執筆されています。「あたりまえ」や「忖度」が通じない異文化の人々にふれあう際の必読書です。

  • 多文化世界〜違いを学び未来への道を探る〜原書第3版
  • 著者:G.ホフステード (マーストリヒト大学名誉教授),G. J. ホフステード (ヴァーヘニンゲン大学准教授),M. ミンコフ (ブルガリア国際大学准教授
  • 出版社:有斐閣
  • 販売開始日:2013/10/21

データで文化・常識の違いを明らかにする

本書では第2章全体を使って、データの分析結果とその傾向について説明しています。
  国や文化の影響で考え方に違いがあると分析された内容は以下の通りです。
 
  ・上司など目上の人物の権力が絶対的かどうかを示す「権力格差」
  ・集団と個人のどちらの利害を優先するかを示す「集団主義-個人主義」
  ・性別によって社会的役割やあるべき姿が違っているかどうかを示す「男性らしさ-女性らしさ」
  ・あいまいさに対しての不安感が強いかどうかを示す「不確実性の回避」
  ・未来のために根気強く努力するかどうかを示す「長期志向-短期志向」
  ・現在の自分を幸せだと思うかどうかを示す「主観的幸福感」

  これらすべてに、国によって相対的なスコアの違いが明確に出たというから驚きです。本書
  ではパーソナリティにレッテルを貼るのではなく、統計調査の結果を客観的に分析し、生
  活全般においての行動の傾向を分かりやすく示しています。

英語には「メンツ」という言葉がなかった! 言葉に見る文化の違い

本書では豊富な実例をあげて、文化の違いがおこす考え方の違いを示しています。
たとえば、「面子」という言葉について、以下のような設問があります。
  “不法行為を犯すことは、本人とその内集団にとって恥であり面子を失うことである。”(集
  団主義的な規範について P101)

  “不法行為を犯すことは、罪の意識をかき立て、自尊心を傷つけることである。”(個人主義的な規範について P101)

ところがもともと「面子」という概念に対応する英語はなく、中国語が入ってきたときに「losing face」という英語が生まれたそうです。その背景には「集団主義-個人主義」の考え方の違いがあります。アメリカのような文化では、違反行為が誰かに見られることで屈辱を感じる面子の問題はなく、違反行為を自分が選択したという罪の問題があるだけです。

  英語を学ぶとき、「間違っていたらどうしよう(間違っているのを人に見られたら恥ずかしい)」という気持ちが強く働き、英語がうまく出なくなるときはありませんか? これは恥の文化で感じられることであり、アメリカ的な文化では、文法や単語が多少間違っていても、はっきりと自分の意見を言うことが正しい行いと受け止められることがデータから推測できます。

異文化とのコミュニケーションには自覚、知識、技術による歩み寄りが大切

さまざまな国において、文化による考え方の違い、「あたりまえ」の違いがあることが分かった上で、不幸なすれ違いを減らし、異文化とコミュニケーションするにはどうしたらよいのでしょうか。
本書は自覚、知識、技術が必要だと説きます。

  自覚とは、「自分のあたりまえが世界のあたりまえではないと自覚すること」です。
知識とは、「異文化について知ること」、そして最後にこの2つについて実践して、環境の中に飛び込んでみる技術の段階に進みます。

  たとえば、日本では人が出会うときにお辞儀をするのが一般的ですが、アメリカでは握手や抱擁をするのが一般的です。
日本でお辞儀の角度に相手への敬意の度合いが表れるように、アメリカの握手や抱擁という文化にも敬意を示すやり方があるはずです。

  国によって挨拶の方法が違うという自覚をし、アメリカ人が好意的に感じる握手や抱擁のしぐさを知り、
積極的に実践して、それが相手に通じるかどうかチャレンジしていく。
挨拶以外の生活全般についてもこのような姿勢でいることが、異文化とのコミュニケーションにおける効果的な方法といえるでしょう。

第1部 文化という概念
 第1章 社会というゲームの規則
 第2章 文化の違いを研究する
第2部 国民文化の次元
 第3章 平等? 不平等?
 第4章 私・われわれ・やつら
 第5章 男性・女性・人間
 第6章 違うということは,危険なことである
 第7章 昨日,今,これから?
 第8章 明るい? 暗い?
第3部 組織文化
 第9章 ピラミッド・機械・市場・家族――国境を越える組織
 第10章 象とコウノトリ――組織文化
第4部 共生への道
 第11章 異文化との出会い
 第12章 文化の進化
参考文献
用語解説

著者プロフィールヘールト・ホフステード(Geert Hofstede)
社会心理学者、オランダ・マーストリヒト大学名誉教授。1928年オランダ生まれ。フローニンゲン大学大学院社会倫理学博士号取得後、IBMヨーロッパに入社、その後マーストリヒト大学などで組織人類学および国際経営学教授。ヨーロッパ7ヶ国で名誉博士号。異文化環境力に関する研究所(IRIC)共同設立者。2008年5月5日付けウォールストリートジャーナルにおいて「最も影響力を持つ20人の思想家」の1人としてヨーロッパ人としてただ1人選出された。
By |2018-11-14T18:59:25+00:00November 14th, 2018|Categories: seeds|0 Comments

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