//木を見る西洋人森を見る東洋人〜思考の違いはいかにして生まれるか〜

木を見る西洋人森を見る東洋人〜思考の違いはいかにして生まれるか〜

(内容紹介)

【海外の方とコミュニケーションを取る上で理解しておきたい考え方の根本的な違い】
東洋人と西洋人、両者の思考の違いがどのようにして生まれたのかに焦点を当てた本です。この本の目的は、東洋人と西洋人の優劣をつけることではありません。思考の違いと、どのようにしてその違いが生まれたのかを紐解いています。これから英語のボランティアガイドを始めようと思っている方にとって、文化による考え方の違いを理解することは非常に重要です。理解しないままコミュニケーションを取ろうとすると、知らぬ間に相手に不快な思いをさせてしまう可能性があるのです。そうならないためにも、異なる文化圏の考え方を学んでおきましょう。

  • 木を見る西洋人森を見る東洋人〜思考の違いはいかにして生まれるか〜
  • 著者:リチャード・E・ニスベット(翻訳:村本由紀子)
  • 出版社:ダイヤモンド社
  • 販売開始日:2004/06/04

好奇心の強い西洋の考え方

本書の前半部分で“西洋人は好奇心が旺盛で、あらゆる物事の本質を知りたいという考えが深く根付いている”と述べています。西洋人は「思い通りの人生を送ることができる」という信念があるため、物事に共通する部分を見出そうとするそうです。

物事に共通する部分を発見することができれば、物事の本質を見抜くことができるという考えから、さまざまな事柄に好奇心を寄せているのです。西洋人は物であれ、動物であれ、人であれ、物事はすべて単純な規則によって理解可能であると思っているそうです。ゆえに、その物事の本質を見抜くことができれば、物事を思い通りに動かすことができるという考えがあるのです。

現在のヨーロッパでも好奇心や知識を深めることを主眼に置いて教育がなされていて、あらゆる議論を好む傾向があります。“「事実はAだ」「事実はAではない」などといった議論がよくされる”と著書でも示されています。こうしたことから、ヨーロッパをはじめとする西洋の観光客には好奇心や知識欲が旺盛な傾向があるので、その知識欲や好奇心を満足してもらうことが重要であることが伺えます。

調和を大事にする東洋の考え方

STEP2ではさらに一歩踏み込んだ「ガイドポイント」まで載っているのが本書の素晴らしいところ。英語やコミュニケーションには自信があるけれど、各観光ポイントの歴史や文化の説明に不安があるという人でも大丈夫。著者の経験と知識を活かした「ガイドポイント」には、エリアの「歴史的背景」「観光のポイント」から「おもてなし」のアドバイスまで掲載されているので、これらを参考に行き届いたガイディングができそうです。日本人である私たちでもあまり歴史や背景を知らずに観光していることも多く、海外から来ている方だからこその視点から投げかけられる質問に、戸惑うこともあるでしょう。

そんな時、英語フレーズを覚えていなくても、この「ガイドポイント」を参考に、歴史的背景や日本の習慣や文化を日本語で頭に入れておくだけで、とっさの質問にも対応しやすくなります。

ボランティアガイド、通訳ガイドの大切なポイントの一つは、日本の「文化」「慣習」を伝えることです。日本人の私たちが当たり前に行っていることでも、外国人観光客にとっては新鮮で驚きの連続なのです。
    
また、本書では「鳥居を通るときや本殿前では軽く礼をしましょう。祭神を敬う気持ちをガイド自ら示すようにしましょう」というような、日本独特の慣習を「ガイドポイント」として読者にリマインドしてくれます。こうした小さな発見や気配りが外国人旅行者の満足度にも繋がっていくことでしょう。

調和を大事にする東洋の考え方

一方の東洋人は西洋人と考え方が異なっており、本書では“東洋人は人間関係の調和や道徳を重視する”と述べられています。その根本的な考え方にあるのは、陰と陽の関係です。陰(女、闇、黒)があって陽(男、光、白)がある。つまり「あなたがいて自分が存在する、他方があって自分がある」という考え方があると述べています。

このように、人間関係の調和を大事にするという考えがあるため、「さまざまなことを知りたい」というよりも、むしろ「他者との時間を大切にしたい」と思う人のほうが多いと考えられます。だからと言って、西洋の人が他者との時間を大切にしないというわけではありません。東洋と西洋の考え方は、それぞれ主眼を置く観点が違うということです。日本では東洋の思想が強いため、日本人には東洋の考え方のほうが理解しやすいかもしれませんね。

東洋は関係性を、西洋は単体の成り立ちを見る

基本的に重点を置いている概念は、西洋は知識や好奇心、一方の東洋は人間関係だと述べましたが、本書ではその理由をもっと具体的に説明しています。西洋人は幼少の頃から、物事を単体で見るように教育されています。対象物がどのようなものかという特徴に注意を払うのです。例えば、「ズボンは長い、靴下は短い」という言い方をします。ズボンは靴下に比べて長いという言い方ではなく、そのもの単体を見てどのような特徴があるのかを見ているのです。

一方で東洋では“物事を連続的な「材」の総体として世界を見ている”と述べられています。「長ズボンは靴下と比べて長い」という見方をし、他の物とどのような関係性があるのかについて見ています。

つまり、東洋は人間であっても物事であっても、周りの関係性まで包括的に見ますが、西洋は人間でも物事でもそれがどんなものなのかを単体で分析的に見るという違いがあるということです。こうしたことからも、東洋はさまざまな原因などの関係性を見るのに対して、西洋は結果などの単体をシンプルに見るということがわかります。

このように基本的な考え方は異なりますが、東洋人であっても西洋人であってもそれぞれの文化を受け入れる力は持ち合わせていると述べられています。ボランティアガイドをするにあたって、日本人らしく互いの関係性を大事にすることは、西洋人にも受け入れられることが理解できます。西洋と東洋の根本的な違いを本書で知り、相手をきちんと理解しましょう。その上で、日本人らしさを大切に、日本文化を上手に伝えていけば、ボランティアガイドを務める際にもきっとうまくいくはずです。

【目次】 はじめに
日本語版への序文

序章 世界に対する見方はひとつではない
 「普遍性」への疑い
 認知科学者は間違っていた?
 思考に関わる謎
 本書の概略
 西洋人・東洋(東アジア)人の定義
 
第1章 古代ギリシア人と中国人は世界をどう捉えたか
 自分の人生を自分で選択したままに生きる――主体性の観念
世の中から切り離された私は存在しない――調和の観念
 抽象的な「本質」の重視
 不変不動の世界
 人間万事塞翁が馬
 真実は双方にある
 連続体としての世界
 自然の発見から科学の発明へ
 万物は関連している
 「矛盾」への関心
 中庸を導く弁証法
第2章 思考の違いが生まれた社会的背景

 アリストテレスと孔子を産んだ社会
 生態環境から認知にいたる流れ
 知の進歩はいかにして起こったか
 場依存症
 導かれる予測

第3章 西洋的な自己と東洋的な自己
 一般論の限界
 東洋の自己と人間関係
 相手が変われば自分も変わる
 対照的な自分への評価
 IBMの調査からわかったこと
 二者択一では語れない
 変化する視点
 不思議な選択
 討論の伝統をもたない人々
 「選び」か、「合わせ」か――交渉のスタイル
 異なる価値観

第4章 目に映る世界のかたち
 包括的に見るか、分析的に見るか
 原子論的なエビソード
 大陸の知の歴史と「ビッグ・ピクチャー」
 世界を知覚する
 「トンネルのような視野」
 環境への注意
 世界を制御する
 コントロール幻想
 安定か、変化か
 未来の姿をどう見るか

第5章 原因推測の研究から得られた証拠

 個人の属性か、周囲の状況か
 行動の原因をどこに求めるか
 勝利や敗北の理由
 アイデンティティと原因推測
 性格は変えられるか
 性格特性の共通性
 属性だけに着目する誤り
 因果モデルをつくる
 後知恵を避ける
 西洋人は単純さを好み、東洋人は複雑さを仮定する

第6章 世界は名詞の集まりか、動詞の集まりか

 古代中国人の関心
 現代人の思考における「カテゴリー」対「関係性」
 規則にもとづく分類
 カテゴリーと議論の説得力
 対象物の世界で育つか、関係の世界で育つか
 属性、安定、カテゴリー
 西洋の知の歴史と二分法
 それは言語のなせるわざか
 言語構造の違いと思考プロセス

第7章 東洋人が論理を重視してこなかった理由

 論理がたどってきた運命
 論理か、経験か
 論理と望ましさのどちらをとるか
 「どちらか」対「どちらも」
 弁証法的な解、非弁証法的な解
 対立的な命題への対処
 信念を正当化する原理
 インチキ話
 相反する感情
 「非論理的」な東洋人が数学を得意とする理由

第8章 思考の本質が世界共通でないとしたら
西洋人データの限界
この違いは重要な問題なのか
文化相対主義を超える
西洋の思考の習慣
東洋の思考の習慣
教育と検査の方法
どの文化に対しても公正な検査は可能か

エピローグ われわれはどこへ向かうのか

認知の違いはなくなるか
東洋人の価値観は西洋化する?
価値観は多極化を続ける?
世界が収束へ向かうもうひとつの可能性

著者プロフィールリチャード・E・ニスベット(Richard E. Nisbett)
エール大学助教授、ミシガン大学准教授を経て、現在ミシガン大学心理学教授(セオドア・M・ニューカム冠教授)。アメリカ心理学会科学功労賞、アメリカ心理学協会ウィリアム・ジェームズ賞、グッゲンハイム・フェローシップ受賞。2002年、同世代の心理学者として初めて全米科学アカデミー会員に選ばれる。『Culture of Honor(名誉の文化)』(共著)をはじめ、著書、論文多数。ミシガン州アナーバー在住。
By |2018-11-06T11:31:48+00:00November 6th, 2018|Categories: seeds|0 Comments

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