「英語なんて話せない!」「学生時代に英語を勉強したきりだから、すっかり忘れてしまった」などと、英語に対して苦手意識を感じている方。「英語が話せない」と考えてしまうのは、決して「英語の勉強が足りないから」ではありません。
この連載では、英語の苦手意識を払拭し、「話せる!」まで到達する実践的な手法を紹介します。
受講生の皆さんと接している中で感じるのは、多くの方が「英語で話す」こと以前に、「伝える」ことをあまり意識していない話し方になっている、ということです。結果として、せっかく英語を勉強してもなかなか思うように伝わらず、英語に対する苦手意識が増える一方なのはもったいない。どうすれば「伝わる」のか、それを意識した考え方にシフトしていくことが必要なのです。
「言葉」よりも「身振り手振り」で伝える
「伝わるコミュニケーション」を考えるうえで参考になるのは、「メラビアンの法則」というものです。
メラビアンの法則を端的に説明すると、
・人が情報伝達をするには、言語情報(言葉そのもの)、聴覚情報(声のトーンや大きさといった聞こえ方)、視覚情報(顔色やボディーランゲージ)の3つの経路がある。
・もし感情を伝える中で、この3つがそれぞれ矛盾する情報を送ったとき、言語情報7%、聴覚情報38%、視覚情報55%の割合で情報が伝達される。
というものです。
たとえば、自分のパートナーが表情(視覚情報)や声色(聴覚情報)では相当怒っている様子なのに「怒ってないよ」(言語情報)と言ったとき、……多くの人は「相手は怒っているようだ」と考えるでしょう。きっと、思い当たる記憶があるのではないでしょうか。
つまり、言語情報より、視覚情報……相手が表情などで表す“メッセージ”のほうが、伝わりやすいというわけです。
この法則自体は俗説的な解釈だと言われていますが、感覚として、コミュニケーションにおけるボディーランゲージなどの視覚情報の大きさは、ご理解いただけると思います。
言語以外でも大量の情報が送ることができるのであれば、英語を非母国語として操る私たちは、このボディーランゲージをフル活用すべきです。実際、英語が不完全で3、4割しか通じていなくても、 ボディーランゲージが加わることで相手が理解してくれることはよくあります。
たとえば、「ambulance(救急車)」という言葉がわからなくても、左手を頭の上に持っていき、救急車のランプのようにくるくる回して、「hospital’s car(病院の車)」とでも言えば「Oh, you mean an ambulance?(救急車と言いたいのね?)」と、一発で通じるわけです。
そうです。
第2話でお話したセカンドベストとボディーランゲージの組み合わせで、会話は大きく回りはじめるのです。
ボディーランゲージで相手を引き込む
ボディーランゲージの効力として「相手を引き込む」というものもあります。
大きな動きのある話し方は、相手の興味を引くものです。目の前で全身を使って何かを説明されたら、誰だって無視なんかできるはずがありません。真剣に聞いてしまうのが人間です。
「英語を話す」という、普段とは異なる状況を乗り切るために、多くの方がネイティブスピーカーのように流暢に、たおやかに、自然に英語を喋ることを目指しています。もっと言うと、難しい単語や洗練された物言いを習得していくことに重きを置いています。
もちろん、最終的にはそこをゴールにしたいものですが、最初は、もっと泥臭くていいのではないでしょうか。
非母国語で流暢に会話をしようとすることは、普段運動していない人がいきなりフルマラソンを走ろうとしているようなものです。
それなら、プロのランナーのように格好よいフォームで流れるように走ることを目指すより、涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃになろうが、ヒザにテーピングしまくろうが、途中でマッサージしてもらおうが、栄養ドリンクを飲みまくろうが……なんとか必死にしがみついてとにかく完走するのです。なりふり構ってはいられません。 英会話を“緊急事態”ととらえ、泥臭く、貪欲に。英語は初歩的でも、身体全体を使って全身全霊で表現していきましょう。
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