//英会話の苦手意識がなかなか消えない本当の理由【2】英会話は「暗記」ではなく「発想」のゲーム

英会話の苦手意識がなかなか消えない本当の理由【2】英会話は「暗記」ではなく「発想」のゲーム

「英語なんて話せない!」「学生時代に英語を勉強したきりだから、すっかり忘れてしまった」などと、英語に対して苦手意識を感じている方。「英語が話せない」と考えてしまうのは、決して「英語の勉強が足りないから」ではありません。

この連載では、英語の苦手意識を払拭し、「話せる!」まで到達する実践的な手法を紹介します。

既存の知識で「やりくり」すれば、英語を話せるようになる

前回の記事では、「“ネイティブ英語”より“使える英語”を目指す」ことをお伝えしました。今回からはそれを具体的に解説していきます。

まずは英会話を「ゲーム」に見立て、その学び方について考えてみましょう。多くの方が、英会話の学習とは「正しい英語の知識をため込んでいくゲーム」と捉えています。

要は、幅広い語彙を身につけ、気の利いた言い回しを覚えるなど「英語の知識の積み上げ」を重視し、「どれだけ多くを暗記できるかどうか」が勝負、というイメージです。

けれども実は、母国語を英語としていない(非ネイティブの)私たちにとって、英会話は「暗記のゲーム」ではなく、今ある英語の知識でやりくりする「発想のゲーム」と捉えたほうが、断然有効なのです。

非ネイティブが英語を日常的に使う環境下で英会話をするとき、頭の中がどうなっているかを考えてみましょう。

たとえば筆者の場合、アメリカには計7年ほど住んでいました。その間、アメリカの大学も大学院も出ています。また、ビジネスの最前線で英語を20年近く使っています。仕事では、高度な交渉から難解な契約書の作成、複雑な技術プロジェクトのリーダーなど、多岐にわたる業務を日常的に英語で行ってきました。 そんな筆者が英語を話しているとき、頭の中はどうなっているのかーー。

実は、ネイティブのように、「考えたことがすぐに口をついて出てくる」わけではないのです。簡単なことや反射的なことであれば、何も考えずにパッと出てきますが、複雑なことを説明しようとするとき、使いたい表現が瞬時に出てこないこともあります。

そんなとき、何を考えているのか。「あれ、なんかいい言い回しがあったな」と、瞬間的に脳内の英語のデータベースを覗きにいきます。 しかし悲しいかな、その探しものがすぐに見つからないことも多いのです。「あ、思い出せない」「あれ、なんだっけ」となってしまいます。でも、大丈夫。本当の英語力というのは、ここから。「ベストな言い回しがパッと思い浮かばない」となってからが、勝負なのです。

▶「セカンドベスト」を見つけることが、非ネイティブにとって重要な英会話力

ベストな言い回しはすぐには思い浮かびません。では、他の言い回しならどうなるか。もう少しベターな言い回しはなんだろう……と、「自分の知っている言い回しに置き換える」という作業を瞬時に始めます。ベストな言い回しが出なければ、「セカンドベスト(次善の策)」で、なんとかしのぐのです。

少し単純な例で見ていきましょう。

「予算」を英語でいうと“budget”ですが、すぐには思い浮かばないこともあるでしょう。けれど、そのものズバリの英単語を知らなくても、中学生・高校生程度の語彙をもってすれば、大概の意図は伝えられます。“money plan”でも、“money capacity”でも、“cost limit”でも、なんでもかまいません。その言葉が示すうちの6割くらいを何らかの言葉で表現できたら、相手が「Do you mean “budget” ?(予算、と言いたいのですか?)」と聞き返してくれるはず。これで一件落着です。

つまり、セカンドベストとは、ベストな単語や言い回しが思い当たらない/知らないときに、今ある英語力でやりくりしてなんとか繰り出す「次善の策」のことです。 このセカンドベストを瞬時にひねり出すことができるよう、脳内の「筋力」を強化していくことが、非ネイティブにとって徹底的に取り組むべき訓練となります。どれだけ英語の知識をため込んでも、それを瞬時に表せなければ、意味がありません。新たに難解な単語を暗記するより、「すでに知っている単語でなんとか相手に伝えきる発想力」を鍛える必要があるのです。

前回もお話しましたが、「ネイティブ」へのこだわりをスパッと捨てて、「使える英語」を手に入れることを目指し、とにかく知っている単語に置き換えて会話を回していく、という考え方に切り替える。そして、まずはタタタタタッと、知っている単語だけで会話を回していく感覚を身に着けるのです。自信もつき、さらにスムーズに会話が回りはじめるでしょう。
「なんとか英語で会話を成り立たせることができる」という自信が芽生えたとき、世界は大きく変わります。難しい表現や気の利いたフレーズを混ぜるのは、その自信が身についてからでも遅くはありません。

「正しい英語を習得しなければいけない」という呪縛から解き放たれると、英会話は本当に楽しく、愛着の湧く有用なものに変わるでしょう。

ただし、一点だけ補足ですが、セカンドベストとは決して「いい加減な会話をしろ」というわけではありません。シビアな交渉や契約といった正確性が求められる局面では、辞書を引くなど徹底的に配慮して、きちんと正しい言葉を選んで使いましょう。また、当然ながら重要な事項は口頭だけではなく、文章に残してダブル、トリプルチェックをしましょう。ビジネスであれば尚更のことです。

セカンドベストの鍛え方については、こちらの動画をご参照ください。

それでは皆さん、また次回!

ハーバード大学にてMBA取得。日本の総合商社にて様々なグローバルビジネスに従事。その後イングリッシュブートキャンプを立ち上げる。また企業研修の講師としても活躍中。総合商社やメーカー等の大手企業や、成長企業向けにグローバル/リーダーシップ/交渉術等の研修を開発、自身も講師として登壇している。

By |2018-08-21T20:16:24+00:00August 8th, 2018|Categories: generalEBC|0 Comments

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