//英会話の苦手意識がなかなか消えない本当の理由【1】「2つの思い込み」

英会話の苦手意識がなかなか消えない本当の理由【1】「2つの思い込み」

「英語なんて話せない!」「学生時代に英語を勉強したきりだから、すっかり忘れてしまった」などと、英語に対して苦手意識を感じている方。「英語が話せない」と考えてしまうのは、決して「英語の勉強が足りないから」ではありません。

実は、みなさんには既に「堂々と英会話できるような基礎英語力」が十分に備わっています。にもかかわらず、多くの方が「英語が話せない」と思いこみ、英語で会話することを躊躇しているのです。それはまるで、十二分な運動能力があるのに、自転車の補助輪を外すことのできない子どもに似ているかもしれません。いつまでも怖がるばかりで、なかなか一歩を踏み出すきっかけが見つけられないでいるのです。

英語の苦手意識を払拭し、一歩を踏み出すために必要なものは、(1)「正しいあるべき姿」のイメージと(2)コツ、そして(3)ほんの少しの勇気です。

この連載では、英語の苦手意識を払拭し、「話せる!」まで到達する実践的な手法を紹介します。

「英語を話すには知識が足りない」!?

英語の苦手意識を持った方には、2つの「思いこみ」があります。ひとつは「英会話に必要な英語の知識量」について、もうひとつは「ネイティブスピーカーの英語に対する過剰な信仰」です。

まず、「英会話に必要な英語の知識量」について説明していきましょう。多くの方が、「英語を話すには、自分の英語の知識はまだまだだ」と思い込んでいます。けれども果たして、本当にそうなのでしょうか。

英会話に必要な英語の知識量を考えるにあたって、参考になるのが「New General Service List(NGSL)」です。NGSLとは、英語を第2言語として学ぶ人のために作られた頻出英単語リストのことで、明治学院大学のCharles Browne教授が中心となって選定されました。大まかに説明すると、新聞や雑誌、書籍、ウェブサイト、ラジオや試験問題、学術機関や職場など、あらゆるところで使われる膨大な英語から、使用頻度によって英単語をリストアップしたもの。いわゆる「出る単」は入試問題などから単語を拾ったものですが、その範囲を日常にまで広げて、「実社会で使われているリアルな英単語」をリスト化したものだと言えるでしょう。

NGSLによると、Spoken English (話される英語)の約90%を理解するために必要な単語数は721(2017年10月時点)とのこと。95%を理解するためには、2595語(2016年10月時点)が必要となります。

ちなみに、日本の中学校の英語教育で最低限学習する単語数は約1200語、高校では3000~5000語くらいになるそうです。そう考えると「意外に英単語を学んでいるのかも」と感じるのではないでしょうか。

イングリッシュブートキャンプでは開講以来、受講生のデータを取ってきましたが、Spoken Englishの約90%を理解するのに必要なNGSLの721単語のうち、少なくとも7割くらい理解していれば、短期集中講座でなんとか英会話が成立するところまで持っていけることがわかっています。

つまり、英会話をはじめるのに必要な英語の知識は、「NGSLの500単語ほど」あればいいのです。さて、多くの方には既に、英会話に必要な英語の知識が十分備わっていることが、おわかりいただけたでしょうか。

「ネイティブ並みに完璧な英語を話せるようにならなくてはいけない」!?

では、もうひとつの思いこみ、「ネイティブスピーカーの英語に対する過剰な信仰」について考えていきましょう。英語を勉強するからには、「ネイティブのように英語が喋れる」状態を目指している方がほとんどでしょう。けれども果たして、それほど流暢に英語を話せなければ、海外では通用しないのでしょうか。そもそも、「ネイティブスピーカーのように完璧な英語」が必須なのでしょうか。

いま、世界には、約8.5億人の英語スピーカーがいると言われています。そのうち、約3.4億人は英語のネイティブスピーカー、つまり母国語を英語とする人たちですが、残りの約5.1億人は非ネイティブスピーカー、つまり、英語以外を母国語とする人たちです。

実際、海外でビジネスをするとわかりますが、ほとんどの非ネイティブスピーカーは「ネイティブのような英語」は話しません。語彙が少なかろうが、表現が平易だろうが、文法的に多少間違いがあろうが、自信をもって堂々と英語でやりとりしています。

先ほどのデータでもわかる通り、現代においては英語を話す人のうち、ネイティブスピーカーよりも非ネイティブスピーカーのほうがマジョリティとなっています。つまり、国際語としての英語は「ネイティブスピーカーのように話せるかどうか」より、「意味が通じるかどうか」こそが焦点となっているのです。極端なことを言ってしまえば、「なんとか意味が通じればOK」なのです。

グローバル社会では、誰もあなたに「ネイティブっぽいキレイな英語」なんて求めていません。国際ビジネスや異文化コミュニケーションで使うために英語を勉強しているのに、ネイティブのような「完璧」な英語を目指すことは、「キャンプ場」へ行くのに「ミシュラン3つ星レストラン級の料理を作るコック」を目指しているようなもの。オーバースペックなのです。キャンプ場で作るなら、簡単なカレーで十分。何しろ目的は「キャンプを楽しむこと」なのですから、友人や家族とわいわい話しながら、協力して作るカレーは、格別においしいでしょう。それなのに、「私はミシュラン3つ星の料理を作る実力がないので、キャンプにいくのは遠慮します』となっているのが、「ネイティブ信仰」をお持ちの方なのです。「ネイティブのような英語を目指さなくてはならない」という思いこみは、スパッと捨ててしまいましょう。

「ネイティブのような英語」を目指していると、英会話の学習も大変です。それは、まるで寸分の精度の違いも許されないゲームのようなもの。たとえば、よくスポーツ・バラエティ番組で行われている「ストラックアウト」(格子状に1から9まで番号の書いてある板が張ってあり、ピッチャーが球を投げて、それぞれの板を落としていくゲーム)を想像してみてください。「ネイティブを目指す英語学習」はそれに似ているかもしれません。どれだけ速くていい球を投げても、「3番」がどうしても落ちない。若干ズレてしまって、「2番」と「3番」の間の格子には当たったんだけど、板が落ちない……。だから、どんなに良い球を投げても「負け」です。「3番」という小さな的を目指すがゆえにフォームが縮こまってしまったり、度重なる「失敗」から嫌になってモチベーションが下がったり……これはなかなか骨の折れるゲームですね。

一方、「ネイティブ」を目指さない、「使える英語であればいい」と決めた瞬間に、見える世界は変わってきます。
これは、先ほどの「ストラックアウト」で例えると、「とりあえず良い球を投げて、ストライクを取ればいい」というゲームに代わるようなものです。のびのびとしたフォームで思い切って投げて、「良い球でストライクのフレーム内に収める」ことを目指せば良いのですから、気持ちも良いし成功体験も積みやすい。

「ネイティブ英語」より「使える英語」を目指すほうに切り替えることで、見える世界が大きく変わってくるのです。

では、「『ネイティブ英語』より『使える英語』を目指すほうに切り替える」とは、どういうことか……。この続きは、次回の連載にて。

ハーバード大学にてMBA取得。日本の総合商社にて様々なグローバルビジネスに従事。その後イングリッシュブートキャンプを立ち上げる。また企業研修の講師としても活躍中。総合商社やメーカー等の大手企業や、成長企業向けにグローバル/リーダーシップ/交渉術等の研修を開発、自身も講師として登壇している。

By |2018-08-21T20:16:58+00:00January 1st, 2018|Categories: generalEBC|1 Comment

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  1. […] 昨日の第1話では、「ネイティブ英語」より「使える英語」を目指すということをお話し ました。今日は、これに切り替えるということは、どういうことかを見ていきたく思います。そ […]

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